これまでに読んだ小説の中で本当に面白かったのはコレ

星を継ぐもの

星を継ぐもの 星を継ぐもの(1977年) ジェイムズ・P・ホーガン

(ストーリー)
死後50000年も経つ人間の死体が、月面で発見された。
彼は何者なのか?
誰かが死後5万年も経っているように細工でもしたのだろうか。
何のために?
それとも、5万年も前に人類は月に行ったことがあるというのか?

(感想)
結局謎こそが人の興味を一番引くようだ。
単純に読書意欲をかき立てられる小説や、
読んでみたくなる小説というのは、
冒頭に大きな謎が据えられていたりする。

そういえば海外ドラマ「LOST」にハマってしまったときも、
次々と提示される謎についつい釣られてしまったのだし。

浦沢直樹の「20世紀少年」を毎週読み続けたのも、
”トモダチ”の正体を知りたかったからだ。

読者を引きつけたかったら最初に不可解な謎を置いておくべきだ。
ミステリー小説の人気の高さも、
これに由来するところが大きいのだから。


死後5万年も経つ人間の死体が月面で発見される。

強烈な謎だ。
「星を継ぐもの」は今すぐ読んでみたくなる小説のお手本のような作品で、
実際わたしはこの小説の存在を知ったとき、
我慢できなくてすぐに買いに走った。
駅前の本屋さんに行ってそこで購入できたのだが、
もしそこでは見つからなかったら他の店まで出掛けただろうし、
そこにもなかったらきっと町中の本屋さんを巡っていただろう。


月で見つかった死体は間違いなく人間の死体で、
宇宙人とかではないことが物語序盤で判明する。
死後5万年も経っているが、それにかんしても細工によって死後経過年数を
ごまかそうとしているわけではないらしい。

そうすると人類は5万年も前に月に行ったことになる。

5万年前といえばまだ原始時代である。
あのエジプトのピラミッドでさえ4千5百年前に造られたもので、
農耕が行われるようになったのでさえ、せいぜい1万年前ぐらいだ。

これだけ途方もない謎を提示し、大風呂敷を広げてしまうと、
たいがいはショボイ種明かしが待っている。
そしてガッカリして本を閉じることになる。

例えばクーンツの「雷鳴の館」
記憶喪失の女の前に死んだはずの人間などが現れて、
ワクワクさせられるのだが、
結末では思い切り肩すかしをくらわされてしまう。
あまりにもバカバカしい種明かしに、腹を立てる気も起きない。

他にもセバスチャン・フィツェックの「治療島」や、
カトリーヌ・アルレーの「呪われた女」などのように、
肩すかし小説はたくさんある。
むしろそういう作品の方が圧倒的多数を占めているのが現状だ。

「星を継ぐもの」はそんな中にあって、
めずらしく最初から最後までよく出来た作品である。
これほど見事な幕切れを見せてくれる小説もめったにない。
本当に。

中盤で少し話の方向性が怪しくなり、
「あれれ、大丈夫かな?」と心配になったりもしたが、
心配なかった。
そのまま読み続けると、実に鮮やかな結末が待っていた。


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