これまでに読んだ小説の中で本当に面白かったのはコレ

暗い鏡の中に ヘレン・マクロイ

暗い鏡の中に ヘレン・マクロイ暗い鏡の中に(1977年) ヘレン・マクロイ

(ストーリー)
主人公にそっくりの女性が遠く離れた別の場所で目撃される。
見た者の話では、それは主人公の女性に間違いないと言う。
そんな不気味な出来事はたびたび起きるように…。
遠く離れた場所に現れるもうひとりの私。
やがてもうひとりの自分は人を殺しはじめる。

(感想)
「不可能状況」はミステリー小説の大きな魅力のひとつだ。
ただ殺人事件が起きて、ちょっと意外な人が犯人だったとまとめられても、
読者は許さない。
手堅く無難にまとめるより、多少のほころびはあっても大風呂敷を広げて欲しいと

願っているのがミステリーファンだ。
とにかく冒頭で不思議な謎を提示してほしいのだ。

そんな不思議大好きな読者の要望に応える作品のひとつが、
ヘレン・マクロイ「暗い鏡の中に」

1ページ目のファーストシーンからすでに一気読み本の気配が強烈に漂っている。

まず主人公である女教師が校長室に呼ばれる。
何だろうと思い行ってみると、突然クビを言い渡される。
理由を尋ねても口ごもってハッキリとは教えてくれない。

理不尽な解雇を取り消させるため周囲の協力を得ようとするが、
なぜか周りのみんなも主人公を避けようとする。
彼らもその理由をハッキリと言おうとはしない。

この出だしが秀逸で、読む者はすんなりと作品世界へ入っていける。

やがて主人公は、解雇の原因がどうやら自分の分身にまつわる
奇妙な噂のせいだと知ることになる。
遠く離れた場所に現れるもうひとりの自分。

学校をクビになったショックと不気味な怪奇現象に対する恐怖で、
主人公はすっかり参ってしまい、友人に泣きつく。
しかしホテルで友人と話していたまさにそのとき、
またもやもうひとりの自分が今度は学校に出現し、
主人公につらく当たっていた同僚教師を殺害する。

これほどの不可能状況をこさえてしまうと、
もう合理的な解決は無理に思えてくるだろう。
「じつは彼女には生き別れになった双子がいて…」
そういう逃げに走るぐらいしかないのではないか。

本書はもちろん双子トリックではない。
では何か?

それを考えながら読むのがミステリー小説の無上の楽しみである。
「暗い鏡の中に」はそれを存分に味あわせてくれる貴重な作品だ。


Home