これまでに読んだ小説の中で本当に面白かったのはコレ

遙か南へ ロバート・R・マキャモン

遙か南へ ロバート・R・マキャモン 遙か南へ(1993) ロバート R マキャモン

(ストーリー)
それぞれが救われない絶望を抱え、苦悩の日々を送ってる。
安住の地を目指し遥か南へ彼らは向かう。
そこで待っているものは果たして。

(感想)
あるとき、ずっと耐えていたものに耐えきれなくなる時がある。
折り合いをつけずっと抑えつけていたのに、
ある日それがあふれ出してくる。

ずっと我慢してきたものだけに爆発したときの反動は大きく、
もう抑制は効かない。

主人公はそうして、これまでの暮らしを崩壊させ、逃亡の旅に出る。
遥か南を目指して。

癒されない傷を負っているのは、なにも彼だけではない。
日本という恵まれた国に生まれ暮らしていても、
自殺者はあとを絶たない。
人間はそういうものなのだろう。
不幸は生きていく人間の宿命みたいなものか。

傷を抱えた人間は主人公以外にも登場するが、
それは現代人のカリカチュアとして出てくる。
変なところからもう一本手が生えている奇形の男だったり、
顔に大きなアザがある美少女だったり、
個性を失った、エルビス・プレスリーのそっくりさんだったり。
主人公をふくめ彼らは誇張された形で我々現代人の苦悩を体現している。

安らぎの地「遥か南へ」、旅はつづく。
おとぎ話のような設定だが、ラストはわりと現実的である。

安住の地なんて本当に存在するのか。
彼らは無事にそこへたどり着けるのか。
彼らに救いは訪れるのか。

そういった興味で読者を引っ張っていき、
やがてそのすべてに答えは出される。
その結末をどう受け取るかは読む人によって違うのだろうが、
悩める子羊をカリカチュアライズして複数人登場させたことが、
結果的に成功しているように思われる。

この作品が普遍性を持ちえたのは、脇役たちの存在があったからだ。


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