これまでに読んだ小説の中で本当に面白かったのはコレ

犠牲者たち ボワロ&ナルスジャック

犠牲者たち ボワロ&ナルスジャック 犠牲者たち(1964) ボワロ&ナルスジャック

(ストーリー)
愛した女性がある日行方をくらました。
代わりに現れたのは、彼女の名を名乗る謎の女。
まわりの連中もその娘を彼女の名で呼ぶ。
この女は何者だろう。

(感想)
いかにもボワナル。
いかにもフランス・ミステリーといった物語設定だ。

美貌の人妻マヌーに主人公は恋をする。
それもつかの間、マヌーは夫の出張に同行して、
少しのあいだ外国に滞在することになってしまう。

主人公はマヌーへの熱烈な想いから、
自分もついて行こうと考える。
ちょうどその夫が仕事上の通訳を探していたので、
それに応募して雇ってもらう。

夫と主人公は先に現地へ行く。
マヌーは数日後に遅れてやって来る手はずだった。

そして約束の当日。
夫と主人公は飛行場にマヌーを迎えに行く。
そこに現れたのはマヌーを名乗る別人だった。
呆然とする主人公をよそに、夫はその女をマヌーと呼び、
当たり前のように歓迎している。

じゃあ自分が想い続けたあの人は、何者だったのか?
身分を偽っていたとしたのなら、なずそんな事を?


あらすじの説明が長くなってしまったが、
そのとおりで、この小説は起承転結の起の部分が
非常に長いのだ。

マヌーの代わりに謎の女が登場して、
物語はやっと立ち上がるわけだが、
それが80ページ目あたり。

200ページほどしかない作品だから、
三分の一以上が「起」ということになる。

しかもこの作品、文体が妙に凝っていて読みづらい。

そういったキズはあるのだが、
これはフランス・ミステリーを代表する傑作であることは
間違いない。

代わりの女が現れてからは、話が怒涛の勢いで走り出すし、
その頃には凝った文章にも慣れていて、
気にならずにスラスラ読めるようになている。

いったい何がどうなっているのか知りたくて仕方がなくなり、
マヌーがどこへ行ってしまったのか確かめたくて
ラストまで一気読み必至だ。


フランス・ミステリーといえば
「記憶喪失」や「死んだはずの人間」
そしてこの作品のような「失踪した謎の女」などが、
題材としてたびたび扱われる。
それを少ない登場人物だけでやるのがフランス流だ。

本作の登場人物も非常に少ない。
主人公・マヌー・夫。
そして、もうひとりのマヌー。
それだけだ。

そんなシンプルな構成でミステリーを生み出して、
サスペンスを盛り上げていき、
ラストで鮮やかにどんでん返しを決めてみせる。


ボワナル作品では他にもヒッチコックが監督した
映画「めまい」の原作になった「死者の中から」や、
失明した富豪の疑心暗鬼を描いた「影の顔」など、
良質なミステリーがある。
それらも読んで損はない面白さ。



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